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木の台に置かれた家が数軒だけの町の模型を、一葉がかがんでのぞき込む水彩画

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小さな町の1位は、あてにならない

一葉(研究員)
一葉(研究員)
先生、人口10万人あたりの順位を見たら、上のほうに知らない小さな村ばかり並んでいるんです。
知秋(教授)
知秋(教授)
人口あたりの数字では、よくあることだ。人口が少ないと、数が1つ増えるだけで、割り算の答えが大きく跳ねるのだ。

1つの差が、どれだけ響くか

人口1,000人の村に施設が1つあれば、人口10万人あたりでは100。2つになれば200です。 人口100万人の市で同じ100から200になるには、施設が1,000から2,000に増えなければなりません。 小さな町の「人口あたり」は、ほんの少しの出来事で上にも下にも大きく動きます。 ですから、順位表の1位が小さな町でも、それが偶然のゆらぎなのか、本当にちがうのかは、順位だけでは分かりません。

人口1,500人の町:2つ → 133 人口60万人の市:360 → 60 全国の率 50 1,000人 10万人 100万人 200 0 → 横は人口(対数の目盛り)、縦は人口10万人あたり。点線の内側は、偶然でも出る範囲

※点は説明用の仮の例です。全国の率を人口10万人あたり50としています。

漏斗(ろうと)の形の線:ファンネルプロット

横に人口、縦に人口あたりの値をとって町を並べ、全国の率のまわりに「偶然のゆらぎでも出る範囲」の線を引きます。 人口が少ないほど揺れが大きいので、線は左で広く、右へ行くほど狭まり、漏斗のような形になります。 内側の点線が95%、外側の点線が99.8%の範囲です。

図の人口1,500人の町は、値が133と全国の倍以上ですが、点線の内側にあります。数でいえば2つ。偶然でも十分に起こる差です。 人口60万人の市は、値は60と全国より少し上なだけですが、点線の外にあります。人口が大きいので、偶然ではここまで離れにくいのです。 値の大きさと、差のたしかさは、別のものです。

市区町村の窓口のうち、施設の数のような「数の項目」がある窓口には、この図を置いています。

見込みの数と、その比

全国の率どおりなら、その町にはいくつあるはずか。人口に全国の率をかけたものを「見込みの数」と呼んでいます。 実際の数を見込みの数で割って100をかけたものが「比」です。100なら全国の率どおり、200なら見込みの2倍。 医療の統計で使われる標準化比と同じ考え方です。

ならした値:経験ベイズ推定

小さな町の揺れをどう扱うか。よく使われるのが、町の値を全国の率のほうへ少し寄せてから比べる方法です。 寄せる強さは町の人口で変わり、人口の少ない町ほど強く、大きな町ほど弱く寄せます。 大きな町の値はほとんどそのまま、小さな町の値は全国の率に近づきます。

寄せる強さは、データ全体のばらつきから決めます。全国の町のばらつきのうち、偶然のゆらぎだけでは説明できない分が大きければ寄せ方は弱く、小さければ強くなります。 この「データから寄せ方を決める」やり方を、経験ベイズ推定といいます。窓口では「ならした値」として、そのままの値と並べて示しています。

一葉(研究員)
一葉(研究員)
小さな村の数字を、少し割り引いて見るということですね。
知秋(教授)
知秋(教授)
割り引くというより、揺れのぶんを差し引いて見る、と言うほうが近いだろうか。村の数字が軽いのではない。数が少ないぶん、一つひとつの出来事の重みが大きいのだ。

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